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2017.07.15 Saturday
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ユーザーは経験を積むことによって、製品の技術的な性能や表面的なデザインの特徴はもちろんのこと、もっと内面的なレベルにおける製品コンセプト全体のユーザー・ニーズに対する満足度に至るまで、製品のあらゆる側面において微妙な違いを敏感に感じとるようになってきた。(p23)
そうなんですよねー。スペックだけが差別化ポイントじゃないのだよな。
ーーーー ハンドルの反応、アクセルの感触、エンジンの音、風の音、ラジオ、ダッシュボードのきしみ、外の景色、他の車、歩行者、同乗者がこの車について話す声等々ーーーー を次から次へと受け取っていく。ユーザーは、これらのメッセージを解釈して、それぞれに意味を付加し、それが製品体験についての満足度、不満足度につながってくる。(p43)
情報の枠組みにおいては、企業の最大の目的はユーザーとのコミュニケーションであると考えられる。モノとしての製品は、ユーザーに対して製品体験と企業のメッセージを伝達する単なるメディアにすぎない。(p44)
ユーザー体験のシミュレーションとしての製品開発(p45)
ユーザーのニーズを認識し、明確化することが容易な場合には、ユーザー体験をシミュレートする能力よりも、内部的な効率性、有効性が大きな役割を果たすかもしれない。他方、市場のニーズが予測しがたく、明確化することが困難な場合は、ユーザー体験をシミュレートする能力のいかんが企業の競争力を左右する。(p47)
他方、ユーザーが、外観のデザイン、個性、ライフスタイルとの適合性といった、もっと微妙な製品の特徴、計画書や仕様書のなかで明確に表現することが困難な特徴に重点を置いて判断する場合には、フェース・ツー・フェースの打ち合わせや試作品がコミュニケーションのメディアとして重要性を増すこととなる。(p47)
製品コンセプトは結局のところ、予測されたユーザー体験であり、ターゲットとなるユーザーを満足させることを期待して新製品が発信するメッセージの複合体である。(p49)
「製品の優秀性」は、基本となる機能的、技術的パフォーマンスよりももっと広い概念である。ある製品について経験を蓄積し、多様な角度からの微妙な違いに敏感になったユーザーは、製品の数多くの特色ーーーー たとえば、基本的機能、美的外観、ネーミング、信頼性、経済性 ーーーーが全体としてバランスよく備わっていることを求める。製品が全体としてこのバランスを有し、ユーザーを魅了し、満足させることのできる度合いが、製品の首尾一貫性を測る尺度と言えよう。(p53)
この、「アメリカ流のコンセプト」は、エネルギー価格が安く、長距離運転が多く、広くてまっすぐな道路網があり、「大きいこと」を評価する文化を持っているという土地柄を反映したと独特の製品体験に基づいてきたものである。(p61)
「昔はただ軽くつくるとか、安くつくるとか、エンジン何馬力だとか、開発目標としての数字が出たわけです。ところが、そんなものでお客さんは満足しなくなってきました。乗ってみるとあれは違うとか、口で言えない1つの切り口があるのです。数字でブレーキの距離がどうとか、加速がどうだということは同じだけれども、あの車が違うというのがあるんですよ。これこそ感性です。」(p88)
「生活の基礎的なものは、すべて満たされているいまの『豊かさのなかでの選択』の時代には、ヤングはいろいろのモノを所有するという豊かさではなく、自分の生活をどう演出するかという『新しい豊かさ』を求めている。このことは、ヤングが車を選択するとき単位価格が安いとか、品質や機能が優れているというだけで商品の価値を評価するのではなく、『都会的感覚』『ハイテク感覚』・・・等といったソフト的な価値が付加されていないと彼らに魅力のある商品とはならない」(p88)
ある日本のメーカーでは、プロダクト・マネージャーはチーフ・エンジニアと同格の高い地位を与えられている。インフォーマルなレベルでも強いリーダーシップを発揮し、製造部門やマーケティング部門も含めた製品開発プロジェクト全体の調整を行う。必要があれば現場担当エンジニアにも直接影響を行使し、製品コンセプトや製品計画の決定権を持つ。そして、現場技術者、デザイナー、工場の監督者やディーラー、ユーザー等とのコミュニケーションのために、オフィスの外での活動に多くの時間を割く。彼らは、一般的に自分たちのことを、単なる調整者ではなく、製品開発プロジェクトの最高責任者である、社内企業家であると考えているである。(p135)
製品の首尾一貫性ーーーー社内における各作業の内的一貫性および製品体験ユーザーの期待との外的一貫性ーーーーは製品開発のパフォーマンスの高さを示す証である。そして、製品の首尾一貫性を高め、市場への対応を迅速かつ効率的にするためには、各部門の一丸となった努力とリーダーシップが必要であり、メーカーがそうした条件を整えるには、経営陣の示す方向性と製品開発組織のあり方が重要な役割を果たすと考えられる。(p163)
試作車を製作するのが早いからといって、製品エンジニアとテスト・エンジニアが試作車製作のサイクルに組み込まれ、効果的にコミュニケーションをとることができなければ、大した価値は生まれない。(p245)
「製品エンジニアと工程エンジニアの対立は、我々(工程エンジニア)が早い時点で製品コンセプトを見る機会があれば、より容易に解消することができる。そうでないと、我々は製造性ばかりを追求しがちである。もし、製品コンセプトを見ることができれば、『よし、売れる車をつくってやろう』とか『製造しやすいが売れない車はいらない』とか考えるきっかけになるのだ。」
問題が複雑になりすぎてわずかな人間で解決することができなくなり、競争が激しくなるにつれて高度の専門技術が要求されるようになって、製品開発に携わる人間の数も非常に多くなった。そして結局のところ自動車メーカーは古い古典的な組織のジレンマに直面した。つまり高度に分業した専門技術を用いて、どのように全体として調整のとれた作業が実施できるかということである。(p293)
しかしながら、ユーザーの満足は、個々の性能の高さとともに製品の首尾一貫性に影響される。したがって、ユーザーの要求を満たすということは分業化と統合との間で適切なバランスをとることなのである。(p319)
だが、車を解体してその部分部分を詳しく調べるだけでは、その車の本質はわからない。個々の部品を理解することは重要なことであるが、車に特色を与え、ユーザーにとって魅力的なものにするには、いかに部分同士が一体となって作動し、他とは違ったユーザー体験を与えるかという点が大事である。(p337)
個々の重要要素ではなく、全体のパターンこそが他との違いを生み出すのである。(p338)
1つの要素だけで迅速、効率的、高品質の製品開発を実現することはできない。(p350)
成功を収めるメーカーは、コンセプト創出、デザイン、エンジニアリング等の多くの異なった視点からの作業が互いにうまく協力して行われ、相互に強化しあうような組織及び管理手法のパターンをつくり上げている。(p355)
どのようなやり方で実現するにせよ、製品の首尾一貫性は、製品開発の優れたパフォーマンスに不可欠の万国共通の要素である。(p357)
いずれも、少数の「成功のために不可欠な要素」にだけ優位性を発揮するというよりも、多くの重要な細部を注意深くバランスさせた点に特色がある。そして、はやりの技法を素早く取り入れるよりも、長期的な能力を重視して、その優位性を継続的なものにしている。(p357)
優れた製品開発パフォーマンスを実現するためのカギは、少数の重要要素というよりも、数多くのさまざまな要素から成る総合的なパターンに一貫性を持たせることである。(p357)
製品の特徴のもっと深いレベルで、その企業の製品全体に流れる共通のテーマ、機能や形状の細部の調査の取り方として表れるものである。したがって、それはマーケティングや装飾的技法にとどまらず、製品開発のプロセスおよび組織全体に関わる問題なのである。
ユーザーは製品ラインの一貫性を製品のもっと深い部分で要求するようになってきており、アメリカのメーカーは、CIはもっと全体論的(ホリスティック)なアプローチーーーーつまり、部品、レイアウト、スタイリングをうまく調和させて各モデルに共通したコンセプトのテーマを持たせることーーーーでとらえるようにする必要があると考えられる。(p372)
将来の自動車エンジニアは、その技能と思考において、技術面と商業面とを合わせ持ち、ユーザーの期待と部品の詳細設計とを結びつける外的統合の推進者にもなるだろう。たとえば、従来型のトランスミッション・エンジニアは、数的な仕様と技術的計算を重視するが、次世代のトランスミッション・エンジニアは、たとえばユーザーがギア・シフトの感覚にどのように反応し、その製品の性格にはどれぐらいのギア比が適しているかといった、人間的要素、ユーザー・インターフェースも考慮に入れるようになる。(p389)
要約すれば、将来のエンジニアは、ユーザーの声と部品の詳細部分、設計とテスト、エンジニアリングと製造、コンピュータと人間の判断、全体と部分、左脳と右脳を統合する技能を持たなければならない。(p389)
優れた製品開発組織をつくることは、優れた製品をつくることと類似している。どちらも細部にわたる調和を必要とし、複雑かつ困難である。(p392)
すばらしい製品であることの証明は、首尾一貫性の存在である。(p396)
組織図をトップダウンにで大幅に変えても、実務レベルの細部の変化が伴わなければ、優れたパフォーマンスを実現することはできない。同様に、小さな実務チームにおいてチームワークを固め、士気を高めても、細部における作業のやり方、行動パターン、姿勢、組織構造、技能、経営哲学等に一貫性がなければ、全体の製品開発パフォーマンスを向上することはできない。何か1つの重要要素、ウルトラCの解決方法存在するわけではない。(p408)