ドキュメント トヨタの製品開発: トヨタ主査制度の戦略,開発,制覇の記録を読んだので読書メモ。
トヨタは最初からずっとトップを走っていたのかとおもっていたけど、ぜんぜんそうじゃなかった。追いつけ追い越せでやってきてトップに踊りでた企業だった。そのことにまず驚いた。
で、追いつけ追い越せを実現するために、どんな人たちがどんなことをしてきたのか。この本はそのドキュメントであるのだが、主に「主査制度」という視点から綴られている。
そして、この主査制度こそが、トヨタを現在のトヨタたらしめるものなのだ。
帯にもこんなふうに記載されていた。
トヨタ製品開発の要であった主査制度とはどのような制度だったのか。その制度によりどのようにしてクルマが造られていたのか。ものづくりのすべての現場に贈る製品開発の極意。
そんなトヨタの主査制度については「
序章 トヨタ主査制度とは」にまとまっている。制度を知りたい人はもちろんだが、製品開発に関わる人は、この章を読むだけでもなにかしら感じるものがあるだろう。
トヨタの主査制度は、主査の守備範囲がものすごく広く、権限と責任も広い。あらゆる面で高い能力が求められる。さらに主査が職を辞する場合についても明示されている。
すごいことですよこれは。ひとりでできるのそれ?無理ゲーじゃね?っていうくらい多忙を極めることになるので当然サポートする人が若干名います。主査付と呼ばれる人です。これがまたすごくて、主査とは一心同体、まるでコピーロボットであるかのように主査と同様のことが求められます。主査と主査付がチームを成し、さらに車種ごとに同様のチームが存在し、それらがひとつの大部屋にまとまっている。そうやってノウハウや知識の共有が自然に上から下へそして横へと日常的に行われている。こうして強みがより太く強力な強みへと自然に成長していくこと。しかも仕組み化されてる。すげー。トヨタの強さ、半端ないですね。
自分ももうちょっとちゃんとしないとなー。
心に残った1文
1文じゃなくて4文になってしまったが、これにはグッときた。
「生産量が増えれば安くなるというのは間違いで、適正生産量がもっとも安い。段取り替えに時間のかかる部品ではついつい一回の生産量を上げてしまい、在庫管理にコストがかかることになる。過ぎたるは及ばざるより悪し」
「要るものが要る時にある、それが必要で、要らない物を造っても仕事とは言えない。一生懸命やればいいじゃないか、と人は言うが、それは日本人の甘さであり、管理能力のなさでもある」
「不良品を造るくらいなら、機械を止める、コンベアを止める。これが『自動化』でない『自働化』だ」
「もっともムダを少なく、ということは、必要な品質を、必要な量だけ、必要な時に、もっとも少ない時間ともっとも少ない労力でやることである」
p156-157
もちろん他にも心を打たれたことばは多数あります。ただ今回はここだけピックアップ。
余談
IT業界だと当たり前だけど在庫が見えない。あまりにも当たり前すぎて、実はこの「在庫が見えない」ことってあんまり意識されてないんじゃないかなと。そして納期に間に合わない問題のほとんどの原因は突き詰めればこれなんじゃないかなとおもった。
スクラムは在庫が見えるようにしている。そこがスクラムのすごいところなんじゃないかなと。話し逸れましたけど。
そういえば、この本の後半でクレスタという車種が登場します。親が所有していたので、形や室内の雰囲気などもなんとなく覚えています。あの当時、確かにクレスタは多かったように思う。テールランプが特長的な車だった。